秘密が始まっちゃいました。
トイレやコーヒーを追加する以外の休憩をとらずに一気に見た。
7時間半。
さすがにくたびれたし、食傷気味だ。

時刻は18時を示している。
同じ姿勢で長時間いたため、肩が凝った。
私は首を左右に倒す。そして、うーんと上に伸びた。

私の足元。ソファの下のラグには散々泣き腫らした荒神さんがうなだれている。

3本の映画の泣けるシーンは、見事に全部泣いていた。これ、制作者側からしたら、「よっしゃ!」って感じだろうな。
泣ける映画に全力で泣いてもらえて。

完敗じゃないですか、荒神さん。

私だって涙ぐむ程度はあったけれど、彼の疲労感は私を遥かに凌ぐだろう。


最後の一本は荒神さんのツボだったらしく、声を殺しきれず嗚咽していた。
肩を震わせ、ポロポロ涙をこぼして。


正直に言えば……、

その背中を抱き締めてあげたかった。


映画より、荒神さんの涙があまりに切なすぎて、私の心を揺さぶる。

理由なんかわからないけど、彼の涙を拭ってやりたい心境になっちゃうのだ。
そして、その泣き顔をじっくりと見たい。

私だけしか知らない。
荒神さんは泣くと、すごく艶っぽい表情になる。
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