最初で最後の恋〜君と過ごした時間〜
僕は駅で、電車を待っていた。

黒いしゅわしゅわとした液体を喉に流し込む。その瞬間、身体じゅうに染み渡る。
ぷはぁっと息を吐きたい衝動に駆られたが、周りに人がいるため、しずかに蓋をしめた。


僕は椅子に腰掛けた。
すると、風が吹き隣から少し爽やかなシャンプーの香りがした。
隣をチラリと見る。




「………あ…」
隣に座っていたのはハルだった。

ハルは静かに本を読んでいた。



長いまつげが、瞳に影を落としミステリアスな雰囲気だった。



声をかけようか……でも、邪魔しない方が……

すると、ハルは本を閉じふと、僕を見た。

「あ………直也君。」

ハルは微笑んだ。

「偶然だね。」

「うん……」

戸惑った。下でイキナリ呼ばれるとは思わなかった。

「藤崎さん、だっけ?なに読んでるの?」

「〜〜!!!!///」

ハルは真っ赤になる。

「ハルでいいよ……秘密!!!」

ハルは、本を後ろに隠した。

「どうしたの?」

僕は後ろを見る。

「だめー!!」

「?!」

本には、ビックフット、ネッシー、UFOと書いていた。

「藤崎さ……ハル。こういうのが好きなんだね…」

「///////ああああー!わすれて!」

ハルは耳まで真っ赤になる。

「……引いた?」
ハルは泣きそうな声で、上目遣いでこちらを見た。

「引かないよ。」
僕は笑った。

「昨日、ミステリー生物のテレビ番組やってて、影響されちゃって…」
ハルは恥ずかしそうに俯いた。

「なんか、意外。」

「秘密、ね。」

ハルは人差し指をくちびるに付けた。


僕はハルのくちびるに目を奪われる。

慌てて、視線をずらす。


「ねぇ、直也君て、宇宙人居たらいいと思う??」

「うー…ん…地球侵略されるのはいやかな?」

僕は、はははと笑った。

「でも、仲良くなれると思わない?宇宙人も案外可愛いかも。」
ハルは、にっこり笑った。

…地球外知的生命体と仲良くなろうと思うなんて…ぶっ飛んでるなぁ
そう思った。

「暑いね。」

「暑いねぇ…。」

同じこと言葉を繰り返し返事する。
僕はタオルで、汗を拭った。



それから、ハルとたわいのない話をした。ハルのような女の子に初めて会った。ちょっぴり不思議な子。そんなハルのことを知りたい。と思った。

「また……会って話、できる?」

ハルは、少し驚いた顔をして笑顔で答えた。

「…せっかく知り合えたんだし、話も合うし…うん、いいよ。よろしくね。直也君。」

「直也でいいよ。よろしく、ハル」

僕は嬉しい気持ちでいっぱいにな
り、笑顔になる。



電車のドアが閉まる瞬間、ハルは手を振っていた。

ハルは口パクで

(ま・た・ね)

と言って、にっと笑った。

僕はそれまで経験しなかったような寂しさを感じた。
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