1ページ〜春〜
「うん、可愛い。
私、天才かも!」
鏡を覗き込むと、まるで梨華の魔法にかかったように確かに変わっていて、さっきまでの幼さがなくなっていて高校生らしさを自分でも感じた。
「ありがとう。」
「うん、毎日やってあげるね。」
「…う…うん。」
高校生だしね。
化粧覚えないとダメだよね。
素直に梨華の言葉を受け入れたのはそう思ったから。
学校の最寄りの駅に着くと、たくさんの同じ制服を着た人達が同じ方向に向かって歩いていく。
「実莉実莉!
あの人、イケメンっぽくない?」
何時もに増して気合いの入ってる梨華は、さり気なく人間観察をしていた。
梨華のゆび指す先を見て見ると、茶色い髪を無造作に遊ばせ、下着がチラチラと見えるくらいにズボンを下げ、イカにもチャライと言わんばかりの男子の姿があった。
「うん、確かに。
梨華のタイプだね。」
「よしっ、1人めの候補発見!」
梨華は少女マンガの中に出てくるチャライとか、不良とか、目立つタイプが好きで、この学校で恋人候補を5人は見つけるらしい。
「実莉はあの人なんてどう?」
再び梨華のゆび指す先を見てみると、さらさらの黒髪で、インテリメガネをかけ、数学の参考書を片手に持って、走ってるわけでもないのに息を切らせ、夏でもないのに汗をかいたぽっちゃり系の男子の姿があった。
「ちょっと梨華‼
私のタイプ知ってるでしょ‼
爽やかな頭脳明晰系探してよ‼」
大爆笑の梨華に私は犬のように何度も吠えた。