EXCAS
 力を望んだ。
 大切な者を守る、決して奪わせない、ただの我侭。
 なんて傲慢。
 決して一人では成せない事もあるが、無茶無理を重ねて自己満足で終わるのか。それは何という、愚の骨頂。失わずに自らが消えるのはよしとする、自己がなくなり失ったと認識する間も少なければよしとなる。それはエゴを通り越した愚者の末路に他ならない。
 ここで気づけたショウは、まだ引き返せるのだろうか。
 ――俺一人で出来る事なんて少ないさ。
 どんなに粋がったって、ちっぽけな人間に過ぎないんだから。誰の手だって借りてやる、それが守る事に繋がるなら。
 失わずに済むのなら。
 それにこれは約束だ、運命共同体と言ったあの時から。
「レナ……俺に力を貸してくれ、こいつらを、ここから叩き出す!」
『了解っ!』
 白い巨大な手が差し出され、小さな赤い手がそれを取る。不意に、あの時と同じ光が包みだす。互いの奥にある命の鼓動、司る小さな優しさを垣間見る。
 優しさの中で眠る、すべてを構成する意思が再び触れ合った。
 光は契約の光、契約の証。
 光は誓約の光、誓約の証。
 白き天使と結ばれた絆、少年の力になる白い絆。
 赤い翼は消えて、白い翼が胎動し。
 金色の瞳はダイアモンド、蒼い瞳はラピスラズリ。
 宝石色の瞳が、新しい宝石の中で輝いた。
 無機質で感情が篭った藍色の瞳はアメジスト、最奥に金のキャッツアイを宿す強い光。
 ショウは、光の中で目を覚ました。
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