EXCAS
 足掻いたところで選択肢は二つ。
 服従か捕縛。
 どちらも自分だけならば悩む事はなかったろう。それにもう一人加わってしまう。
 正体不明の、年端もいかない女性だと認識してしまったレナ。
 あれがEXCASだと割り切れたのなら、簡単に切り捨てられたか。
 無駄なIFだと苦虫を噛み潰す。
 もしに救いがあっても、実際に救ってくれはしない。
 やり場のない怒りをどうすればいい、口端が切れるほどに噛み締め切れる。

 ふと、どうしようもない考えが浮かんだ。

 亮太も、同じような怒りを感じたのだろうかと。
 突然の出来事で姉を失った。そのとき起こった感情は、自分と同じものではないか。そう考えた。
 善は急げというが、これは善にはならない。
 ただ救いを求めて、出口のない迷路攻略のヒントを聞きだしたくて、格納庫まで走った。
 過ぎ去る人間は無視し、訝しがる人間は眼中にもない。ただ、

「ショウ!」

 聞き慣れた声に、何度かスリップしながら急停止した。
 タイヤ付きの行動であったなら間違いなく跡がついていただろう疾走に、けれど声をかけた二人は不思議がらず奇異の目でもなく普段どおりに見つめていた。
 そこにいる存在を、いつも通りに。
 だが心情は別、どうしてそこにいるのかと。
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