EXCAS
 だが、少しだけ見えたような気がする。
 少しだけ、感じ取れた気がする。
 最後の表情が。
 その、最後に溢れた感情が。
 呆気に取られた、あどけない顔。
 とても不釣合いな、からかわれたと自覚する前に見せてくれた楽しい顔。
 けれど、それは次の表情に繋がる事がなかった。

 どうして、と。
  そう問われているような気がして仕方がない。
 どうして、と。
  ただ疑問に満ちていた。

 何故こうなったのか、何故自分なのか。
 何故、何故、何故と。
 どうしたらいいか、わからない。
 出口のない迷宮に迷い込んでしまったような、そんな永久の苦痛。
 それが、ひしひしと伝わった気がする。
 答えは知らない。
 だって、その人は、この世から消えたのだから。
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