EXCAS
 戦場より、遥かに離れた空の中。
 今までと変わりない速度で飛翔していた。
 時折ピンボールのように弾かれ、見えない壁に跳ねる跳ねる跳ねる。
 前に進んでいるようで、事実まったく動いていない。
 否、動けていない。
 人間大ほどの見えない弾丸。どこから来るか気づいた瞬間には、回避不可能な距離まで迫っていた
 。それを受けて致命傷にならないよう、魔力の障壁を一点集中して防御する。
 反動で彼方に飛ばされ、進むたびに襲われる。
 この繰り返しで痛みだけが蓄積される。
 絶望感までもが徐々に積もり始める。

「(っ、こ、の……せめて、姿さえ見えれば)」

 どんな物でも構わない。
 実体さえ視認する事が出来たなら、如何なる手段を用いてでも一泡吹かせられるのに。
< 191 / 493 >

この作品をシェア

pagetop