EXCAS
 触指は等しく万人を襲う。
 触手は選り好みし獲物を狙う。
 触腕は、唯一の輝きに向かう。

「っあ、はぁ……」

 押し寄せてきた思考に吐き気を催した。
 この身体でぶちまける汚物はないのに、無用の生理的な物が止めどなくやってくる。
 魔力は思念さえ捉える。深い負の波動を宿したウラミツラミが篭った思念を、狂気に飲まれ朽ち果てたの者の残留思念が内から汚した。
 常人が狂ったこの空で、どうして天使は生きていられる。
 なんていう事はない。
 負よりも勝る思いが突き動かしているだけだ。

「……っつ、は、やく、行かないと!」

 奥に鎮座する悪魔、名をJudgment・LENA。
 レナを裁くモノ。
 自らの断罪者がいる処へ、どうして向かっていく。
 それは淡く、なんとも愚かしい幻想に縋っているからだ。
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