EXCAS
 黒い窓辺の青い海。
 昼より暗く夜より明るい、曖昧な世界。

 白いカップを片手に厚手の本を持った男がいた。
 無関心な瞳は本の世界に没入しているわけではない、単純に存在するすべてに興味がないだけ。

 何をしに来た。ここには何もない。汝に興味はない、が何故吾のところにいる。

 そこに音はない。だから男の声は言葉ではなく、頭の中に浮かぶ文字の言葉。
 しかし、誰に向けられたのか。

 歪む部屋の景色。
 蜃気楼のように陽炎のように実体がないそれは、影の黒さもない透明色に、水面側にいる印象を持つ。
 だが男は、何かではなく誰かを強く感じ取っている。
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