EXCAS
「おい、一体何をしてるんだ!!」

 誰か入ってきた。知らない男二人が詩絵瑠を取り押さえた。
 ナイフは突き刺さったまま、どんなに喚き嘆いても彼らは放さない。
 これ以上の抵抗は無意味と知っても、罵詈雑言と言葉にもならない叫びを散らす。
 組み敷かれた彼女に近付く。
 真っ赤な瞳に射抜かれるが、怖気づかない。
 その顔に一層近付き、耳打ちした。

 用は済んだ、それだけで立ち去る。
 戸惑った男たちには目もくれない、ただ泣き叫ぶ詩絵瑠の声が痛々しかった。
 そんな彼女を抑える事に必死なのか、追ってくる気配はない。

 折角治したのに意味ないな、とぼやいてみたがそれで傷は治らない。
 眠っている間と、歩く事に精一杯だった状態で魔力なんて使えない。それこそ自殺行為。
 傷を治すためには動いてはいけないわけで。
 力なく、その場に崩れ落ちた。
 そこは一体どこだろうか、朦朧とした意識で歩いたために場所がわからない。ただ、視界の端から誰かが駆け寄ってきて、
 ――そこで、思考が刈り取られた。
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