EXCAS
 その手段とは実に単純で、ただ放出すればいいだけの事。
 魔力をエネルギーとしてただ出す事で、それだけで充分過ぎた凶器になる。だが、所詮は人間の魔力。身体の大きさが違いすぎるのでは、それほど脅威ではない。全魔力を使って、OS一体壊せる程度だろう。ならば、この威力は何だ。EXCASの魔術兵装と互角以上に渡り合った、この男の魔力は。

 考えるまでもない。すべては語ったとおり。
 ただの魔力、何の加工も誇張もされていない、男の純粋な魔力。男の純粋な強さ。
 最悪のケースと、そう嘆く気持ちもわかるだろう。方や消耗し受身に回り、方や余裕綽々と次の攻撃を繰り出す。皮相的な思考は拭えない。

『流石だな。まさか、ここまで腕を上げているとは思わなかった』
「……どこかで聞いた事がある声だ。そう、何処だったか……」
『ははは、まさか忘れられているとは。だが、俺は君を忘れてはいない。捕らえられなかった時から、戦いがあるたびに君の活躍を耳にした』
「光栄だね。まさか敵側にファンがいるなんて思わなかった。生憎サインはまた今度にしてくれないか、まだ考えていなかったんでね」
『それは残念。でも折角こうして会えたんだ、出来ればダンスでも踊ってほしいんだがね』
「男相手にかい? それは少し遠慮したいな。ワルツは女性と踊る事にしているんだ」
『安心を。手をとる必要はない。最高なハードコア・パンクでいこう』
「……いいね。化かし合いは苦手だ。あとは、この手で語るとしようか」

 構えが変わる、黒い刃は二本に。
 レイピア同等の細さだけれど、感じる威圧感がただのそれとは異なる。
 ならばと、ショウも武器を変えた。粒子に変換、再構築、逆手二刀の双剣。ただ同じ武器にすればと思ったわけではない。
 速さで互角以上な上に手数が増えたとあらば、一刀だけでは防ぎきる自信がない。『古き印』の防御力を容易に貫通してしまう、その刃の前では。
< 370 / 493 >

この作品をシェア

pagetop