EXCAS
 語る言葉はない。
 化かし合いは苦手と宣言し、共に踊ろうと進めたのだから。
 自然と体が動く。見えない時を告げる大鐘楼が、鳴り響く。

 鍔迫り間合いを取り、また打ち合う。
 上段下段中段、唐竹切り上げ袈裟逆袈裟、音は外から伝わらない、ぶつかった衝撃が聞こえない剣戟を奏でる。
 さながら戦前の兵士の足並みか、バンドが演奏する主旋律のドラム。
 一撃、また一撃、圧し折れるほどに喧しく荒々しく。高揚感が支配する。

 これぞ戦い、命のやり取り奪い合い。
 人が生きていると実感できる、唯一の時だ。

 これが戦い、命のやり取り奪い合い。
 こんな事でしか人は生きていると実感できない? それは悲しい。

 白さは濁り、黒さは薄れ、魔力は枯渇していく。
 そんな事が何度続いただろう、まだまだだと命を削る。
 移動手段は弾かれたボール、限界だと誰かが感じれば弾けて飛ぶ。それを追ってまた戦争が始まる。とても小規模な千機に匹敵する戦い。休符は一拍、長く指を止める事も痺れた唇をリラックスさせる事もない。常にフォルテで鳴り響く音符はかなたにいる万人の耳にさえ届いただろう。
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