EXCAS
 ぼんやりと、疲弊しきった頭の中で声が聞こえた。
 聞きなれない、忘れられない声。幻聴だと一蹴できるだろうが、知らず応対している自分がいた。

 生きると実感する、それがなくては人はただの屍。動く屍。
 その意味を探し出せたのなら、追い求め続けるべきではないか。間違いなどと、言う権利は誰にもない。

 それはそうだろう。俺も同じ、生きるという意味を……たぶんまだ探している。
 見つかれば続けるさ、さもなければ挫けてしまいそう。

 否定はせんと? その割には乱暴すぎた物言い……いや、あれは否定ではなく、
拒絶。それが生きる意味だと、自分も同じだと認めたくなかった。貴様が目の前に立ち続ける限り、それに引き摺られてしまいそうで。

 殺し合う事は生きるという意味ではないと。なるほど、その意味は千差万別。
 たまたま俺はそうであっただけの事。
 なら、どうして貴様はここにいる。
 己の生きる意味は殺し合いではないと言う。
 戦争は避けるべきだという。
 ならば、どうしてここにいる。


 お前は、どうして戦場(ここ)に在(い)る――――?


 俺は、どうして戦場に在る、か――――


 朦朧とした意識が現実へ覚醒に向かう。
 心地よい疲労感、囁き続ける妖精の歌。
 あらゆるものが眠りを誘う。
 せめて安全な場所にと薄れる頭に刻み付け、ゆっくりと白濁の中に飲まれていく。
 一時のサビから抜け、もう一度最後の出番があるまで休みは続く。
< 373 / 493 >

この作品をシェア

pagetop