EXCAS

嗚呼、是即ち無価値に候

 ロケットを抱えていた。
 幼い顔つきが二つ、純粋な瞳が語りかけてくる。
 古すぎて色褪せてしまった思い出たち。

 それを見るたびに、涙が流れた。

 枯れ果てたと思えた液体は、この時だけは姿を現した。
 赤くも黒くもない、無垢なる雫。
 悲しみを湛えた人としてあるべき姿。
 待っていろと切に叫んだ。
 その思いを、吹き上がる感情を押さえつけもしない。何年も絶食した肉食獣のそれを思わせる血走った眼、砕けんばかりに噛み締められた歯は軋み唇が切れた。赤い血は、躊躇う事なく嚥下された。ごくり、と。味わい酔いしれる。
 静かなる胎動、脈打つ心臓の鼓動、明確なる意思が呻る。
 もうじき動き出す事を、歓喜しながら。
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