EXCAS
 張り詰めた糸に等しい無限の時は、雑音が入った清音により断ち切られた。
 しゃがれた声だった、こけた輪郭は骨、窪んだ瞳は悪鬼のソレ。生理的に嫌悪する存在は、おそらく人ではない。そんな印象しか湧かない、あれは未知なる存在だと。
 だというのに、事もあろうにそれは人語を解していた。人語を口ずさんだ。

『抵抗者たちよ。ここまで、見事であった』

 抵抗者たちよ。ここまで、見事であった。

 開口一番に、それはそう言った。
 信じられないものを見る目つきで、幹部たちは己が目を疑った。
 彼は好々爺だった。
 何に対しても怒らず、罰を与え死刑を宣告する時でさえ憎悪がなかった。喜怒哀楽のどれもが欠けてしまったような仮面、それが老人の顔だった。彼らが知る、老人の顔。
 ならば、ここにいるのはなんだろう。
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