EXCAS
 死に体の顔、痩せこけた頬、震える指先、悪鬼を宿した瞳。誰もが知らない、ここの王がいた。
 信じ難い存在だった。長く付き合った者でさえ、改めてこれは何かと疑うだろう。というより、長い付き合いなどほんの数年でしかない。なんとも奇怪な形で集まられたのだ。何もない宇宙に呼ばれ、誰もいない宇宙に呼ばれ、いつの間にかソレで現れた。
 機械の惑星。共に作り上げたのではなく、初めからこの老人が持ってきたのだ。
 自らの王国を、自らが王として。

 彼の名は『バルザック・アザトース』

 そう、陰惨にして朗々と名乗った。
 今この時と同じように、絶対の服従と恐怖を与える声色で。
 色のない平面の画面に彼は映っていた。何らかの装置によって投影された、バルザックの顔。誰彼もが恐れ戦いただろう。これは自分たちとは次元が違うものだと、理性ではなく本能で理解した。
 人であって人でないモノ、これには逆らえないと。
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