EXCAS
「、……っ。こん、なものが、あってたまるのか。許されてたまるものか!」

 融けていく人がいた。
 溶けていく命があった。
 融けて、溶けて、熔けて、解けて。そこには何もなくなっていた。在ったものは失われて、なかったものに注がれていく。

 視界は惑星に向けられ、襲い来る自然災害の一切に関与はしなくなった。そこに蠢く胎動を感じながら、堪えようのない怒りに支配され二人は往く。止めなければならないと、そこにある存在を壊さなければならないと。
 雫の災害に耐えながら、銀の軌道を避けながら、減らしても減らない害意の先へと進む。
      ――邪魔をするな。



 万人が傍観する中、自分たちは関係ないと蔑む中、どうするべきかわからない人たちを放って進む。
    ――取り返しがつかなくなる。



 鼓動が高まり、だんだんと闇に伝わっていく。その不穏な空気は、まだ流れ出ていない。
    ――どうして気づかない。
手を止める者がいた。それを叱責した者も。やがて止める、水面に伝わる波紋のように。
  ――ここにいてはいけないんだ。
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