EXCAS
「ふふ、そう簡単に降ってはくれないわよ。それに、今は傘を持っていないから大変よ」
「うん、早く帰ろう」

 シトシトと
 ポツポツと
 サラサラと
 雨が降り始めた。
 どこまでも楽しく、どこまでも笑顔で家族は行く。
 その雨が晴れ、歌いながら歩を進め、ふと空を見上げた。

「きれー」

 それが最後の言葉。賞賛の言葉。
 優しく、母の抱擁に包まれた彼女の言葉。

 母は、知らず泣いていた。その意味がわからず。

 ユグドラシルが聳え立つ。機械の居住の中心に。何万人の人を巻き込んで。
 宇宙に一つの、彼岸花が咲いた。
 ステーション名・ステイ零三。
 数度戦場にされたそこは、たった一度の無慈悲な攻撃に耐えられなかった。
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