EXCAS
 この光景を、一体何人が見ただろう。
 報告が入るまで、一体どのくらい呆けていただろう。
 二つの男女の声が不協和音を奏でた時、それの意味を知った。
 自分たちが守ろうと決めて、自分たちを守るべき存在と見送ってくれた場所が。列車に轢かれてこの世から消え去った。たくさんの人間を巻き添えにしながら。
 そんな現実離れした現実を、一体誰が信じただろう。
 だが、もっともそれに該当する者がいる。
 それが、この世の終わりを思わせる声で、泣いている。
 それが現実。ここが現実。
 すべて現実。これが現実。
 彼らの家が、壊された。
 彼らの家族と共に。
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