EXCAS

 ――――そんな事はない――――

 殻が震える、夜が砕ける、その勇言がすべてに響く。
 バルザックは両目を見開いた驚愕、レナは珍獣を見るかのような驚愕、他のあらゆる者は流暢な外国語を聞く驚愕。抵抗する四肢を削ぎ落とし、耐え抜こうとする意思を砕き散らせ、我こそが王道と主張する支配の力。それを覆そうとする言動は、驚き以外になんと感じればいいのか。
 歌は続く。抗いと救済が共存した歌が、それは間違っているのだと。

『何が違う、何故違う! 間違いなどないさ、所詮現在しか知らない君の発言に力などない! それがすべて、それが真実さ。今の君は、大切なものを失った事実を、その責任が君自身にある事を認めていればいい!』

「あんたはわかってない! 過去なんてどうでもいいだろう、大切なのは今というこの瞬間なんじゃないのか! そんな古い事を持ち出して、彼女を苦しめるな!」

『ハッ! 何を庇う、君はそれに惑わされただけだろう。惑わされ道を違え、そうして大切なものを失った。その根源を庇う道理が何処にある!』

「本当に、あんたは何もわかっていない」
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