EXCAS
 剣が鳴る。
 失われた身体の装備はその身に宿り、その象徴としての剣が映える。
 鈴の音、錬鉄の音、鈴虫の音、そのどれでもない澄み切った音。異質で異常で、それでも綺麗だと思える音色。
 それはやがて、この空間さえも越えて届く。
 眠りし存在は、そんな子守唄にも等しい音に敏感に反応した。気持ち悪い、怠慢すぎる、腐り果てて逝きそうな色の中で。
 呼ばれている、呼ばれている、呼ばれている、ならばそれにお答えしよう。
 ――――、――――、――――
 空間が鳴動した、痛々しい胎動がある、外と内から圧力がかかり破れが生じる。
 亀裂は小さく、罅割れは無限に、呼びかける音が強まるたびにすべてが大きく。驚愕の声にあわせ、それらは一気に侵食を始めた。

『馬鹿な! それは悪魔の身を守る守護者。その命に反応して現れる空間の断絶者! 何故お前が呼べるというのだ、操られ弄られただけの魔術師が!』

「この呼びかけに応じよ、守護者。我が名は契約者。その主と盟約を交わした者」

 姿が変わっていく。
『イクシアス』という異質から、更なる高みの異質へと。
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