EXCAS
 少年はまだ戦っていた。その言葉に屈する事なく、認めはしないと抗い続けている。
 それは、一体何故? そう思わずにはいられないだろう、ガイアの言葉はまさに的確正確。この根源はレナにある、彼に関わらなければここまで戦争は激化はしなかっただろう。彼が関わってくる事を断固拒否すれば、その手を汚す事もなかった。ランサーがあの場で死ぬ事もなかった、その死を見せる事もなかった。初めの出会いさえなければ、

「彼女がいなければ、俺は死んでいた」

 あの神々しさを覚えている。
 一瞬で魅了された事を覚えている。
 守って負った、悲痛な声なき痛みを覚えている。
 巨体の正体が明かされた時の、神秘な光景は焼きついて離れない。
 今はもう亡き少女と、三人で過ごした暖かな日常はよき思い出。
 魔術師としての覚醒は誰かを守るため、その決意は忘れられない。
 共に戦おうと激励してくれた優しさを、手放せればなんて考えられない。
 大勢の人間が殺されて、その光景から自分だけ逃げるなんてしたくなかった。
 例えその身を投げ打ってでも、守りたいものが出来始めていた現実、目を逸らしたくなかった。
 こんな人間を、好きだと言ってくれた人がいた。
 答えはいまだに返していなくとも、いつかは返してあげたいと、心から思えていいる。

「後悔はしたくない。例え誰を失っても、そう思える今が在る。そう思える出会いがあった。だから――――」

『それほどそいつが大切か! 友を失い、その身が朽ち果て、それでも他の何よりも!』

「大切じゃないものなんてなかった! 後悔はしたくない、するつもりもない、だからこんなに辛いんだ!!」

『だから、そこでそいつを責めればいいだろう!! たった一人を責めるだけで、君も友も救われるんだ!』

「そんな事はない。誰も、恨んでくれなんて言っていない! 他人の気持ちを、勝手に図って押し付けるな!」

『何を言う、何が違う! 誰もが恨み辛みを残してこの世を去る、君とてその一つになる! それがどうしてわからない?』
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