EXCAS
 剣の色が変わっていく。
 黒く、この夜よりも黒く。黒竜王を思わせるほどの圧迫感(プレッシャー)、禍々しさを感じない、それは高潔。たった一つの思いを抱き、それが真実と訴える力。この世に綺麗事ばかりはない、それを理解しろという。

「わからない! みんなが誰かを恨んでいるわけじゃない、何よりも生きている人の幸せを願うんじゃないのか! 醜いものばかりじゃないんだ!」

 剣の色が変わっていく。
 金(しろ)く、この月よりも金く。神話界の幻想種族ほどの圧迫感(プレッシャー)、禍々しさを感じない、それは高潔。たった一つの思いを抱き、それが真実と訴える力。この世にだって綺麗な物はある、それを理解しろという。

 殻の内側から、手を伸ばしていた。身動きできないほど縛ってしまった身体の奥で、そう思える意思の火が灯る。蛍火ほどの明るさでしかないものの、その世界では何よりも暖かい。
 希望を持ってしまってもいいのか、そんな縋る視線に気づいてくれたか。
 謳う黒の光。謳う金の光。淡光の星を境に、一瞬の交わり。交叉、炸裂、発光。その三動作が行われる瞬間の出来事、彼らはまた、言葉を交わしていた。

「百歩譲ろう。確かに人には綺麗なところもある。だが、それでどうして君が憎まない道理がある?」

「だから、言っているだろう。後悔をしたくないから。彼女にそんな言葉を投げかけたら、そんな感情を抱いたら、きっと後悔する。これまでの道さえ、無駄になってしまうから」
< 423 / 493 >

この作品をシェア

pagetop