EXCAS
 涙が止まらない。その一言一言が、傷つき罅割れた大地に染み込んでいく。癒しの雫、心の動力源、僅かな疑問が最後の砦。

「わからない。それは結果だろう? 最終的な形、後悔したくない。ならば、その初源はどこだ。そこまで思いを固めさせた、動機は何処にある」

 黒さは竜巻、感じる鼓動は津波の前触れ。あらゆるものを飲み下そうとする、夜の濁流。

「さあ。動機なんて、思った瞬間なんて覚えていない。いつから、こんな思いを抱いたかなんて」

 金さは台風、感じる鼓動は渦潮の前触れ。すべてを受け取りこもうとする、日下の荒波。
 遠くなく、近くなく、いつの日だったかに思いを馳せた。
 すべてを覚えていて、そのすべてがやはり掛け替えのないもので。
 どれがガイアの言う初源であったかなど分別がつかない。
 敢えて言うなら、それは出会った瞬間ではないのか。実る事がないと伝えられた、初めて出会った瞬間に抱いた思い。
 相応しくない時なんてなくて、どれか一つだけなんて選べなくて。だから答えは一つしかない。敢えてでしか言えない言葉よりも、答えと信じたい思いを告げる。
 その言葉を、彼女は聞いた。
 疑問を浮かべあげた瞬間の事、最後の砦が出現したその時の中で。

 わたしは、生きていてもいいんですか?

 答えは出た。穏やかな笑みを浮かべて、この激闘に相応しくないほどに穏やかで。
 その視線は、二つの色はただ一人に向けられた。いつまでも出てこない、誰かに呼ばれる事を待っている、いつかの誰かと同じ人に。
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