EXCAS
 何処に、何処に味方がいるというのだろう。
 焦げ汚れ、残骸が散りばめられた曲状の床。
 どれが敵で、どれが味方だった物だというのか。判別なんて、つくはずがない。
 これが戦場、これが仕方がない事だと。
 今の彼に、そう思える感情制御は存在しない。

「……どうして、こんな事に」

「立ち止まっちゃあ、駄目だよ。ほら、すぐそこが、ゴールだから」

「何言っているんだ、ゴールがなんだよ! みんな死んだ、たくさん死んだ! 隊長も、死んでしまったかもしれない。ヴァイフェさんは死んで、ダージュさんはどうなったかわからない! どうして、そんなに落ち着いていられるのさ」

 最後の酒盛りを思い出した。それほど煩くなかったとはいえ、思い出の中では充分な馬鹿騒ぎではなかっただろうか。
 それはもう、過去の事だと美化された証。
 二度と見られない、二度と経験できない過去の事だと。
 それはどんなに寂しくて、辛い事だろう。
 目を閉じて思い出そうとした。自分の姉の事を、失う前の平穏を。それがどんなに懐かしくて、曖昧だったか。
 思い出そうとして懐かしく、とても遠いものだと実感した時。
 それは二度と感じられない、悲しさ。
< 454 / 493 >

この作品をシェア

pagetop