EXCAS
 やや遅めの飛行、楕円を描きながら接近しながら後退していく。
 その動きを追うように、触手が一斉に攻撃を開始した。紅い閃光の雨が降る、だがそれはたった一機を集中しているために、少し加速させればあっさりと回避できる。

「(上三つと下一つ、タイミングはほぼ同じ。他左右同列の四本もまた同じ。残りの二つはそれぞれ違う。確認……終了!)」

 詩絵瑠から送ってもらったデータは、まさに今ほしい亮太のそれだった。
 目算と同等の結果を叩き出したそれは、彼の確信を強めた。ならば、派手に動く必要はない。
 同じ軌道を繰り返す、ただし今度はビームシールドを展開し片腕にはライフルを装備している。
 弾切れはない。
 すべてを一発ずつで落としたとしても、まだ余裕があるほど。
 楕円の軌跡、速度は変わらず。
 それを確認した触手は、今度は包囲するように散開して一斉射撃を――

「いまだ!」

 一番はやく仕掛ける上と下の触手。それぞれを事前にロックオンしていた亮太は、ただ単調に引き金を引く。詩絵瑠の詳細な狙いは、確実にその銃口を捕らえていた。
 実弾ならまだしも、それは光弾。圧縮されたエネルギーが飛び出す入り口を塞がれては、暴発。
 起きた被害は、その威力を雄弁に物語っていた。
 瞬く間に四本の触手は大破した。
 即座にシールドを展開し、当たると予測できたそれらを防ぐ。
 一度だけで大きく軋んだそれは、長く持たないだろうと確信する。しかしそれは予定範囲内。これを合わせたったの四回、それですべてを破壊し尽くした。
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