EXCAS
 そんな声に従っていては、もう遅い。さっさと扉の縁に隠れる二機。一斉に出た射撃に、だが戸惑う事はなかった。奇しくも、そんな予感がしていたのだ。
 中にはいくつものOS。液体化した人間が充満している、ただの操り人形の山。それが織り成す銃弾の雨は、とてもではないが潜り抜けられそうにない。

『亮太、俺が行こう。援護してくれ』

「……わかりました。自分の腕では、おそらく避け切れません」

『そうだ。だから、』

 その先を、聞きたくないというのに。
 だから、余計なおしゃべりを続けようとしたのに。

『俺が向こうに着いたら、お前は帰れ』

「…………そんな事、」

『お前には未来がある。巻き込まれたとはいえ、二度と戦争には関わらせたくないと、俺は思う。まだ、お前は帰れる地点に立っているんだ』

「それでも、仲間を見捨ててまで、戻らなくてはいけないんですか?」

『もちろんだ。お前には、その価値がある未来があるんだ』

「誰の未来にも、命にも、それだけの価値があると思いますっ」

『亮太。俺を、よく見ろ』

 コクピットが開き、中からゼムが現れた。ひどく、赤く汚れたコクピットの奥に。
 もう、助からないんだと。遠目からでもわかるほどに。
 こうなるとわかって、こんな事態だとわかってここまで来たのだと。

『わかってくれ。ここが、俺の死に場所だ』

「っ、わ、かりましたっ。隊長、これにて」


「お別れだね。亮太君」


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