EXCAS
「もう助からない。君が助けられる人は、この場所にはいないの。だから、別の人を、助けてあげて」

「っ、ここで助けられないって言うのに、一体……誰を助けろって言うのさ」

「未来を。どこか、いつかの未来で。
 君を、必要としてくれる人の事を」

「……そんな人が、いるっていうんですか。みんな、僕を生かそうとして、いなくなってしまったのに」

「っ、ぁ、……それだけの、価値があるのよ。君には。だから、お願い」

 未来にいる人たちを、助けてあげて。
 そう、メディアは言って……眠った。
 深い深い眠り。目覚まし時計も効かない、特効薬も王子様のキスも効かない、とても深い眠りに。
 慟哭はない。悲しみは溢れすぎた。
 怒りは湧かない。寂しさは臨界点。
 ただ、そう言うのならと頷いた。
 みんなが口々にそう言う、未来には価値がある。君は生きてくれと。
 そこへ繋ぐようにと伝言までも預かった。
 ならば、死ぬわけにはいかないではないか。
 左右対称ではなくなったバーニアが吹く。
 生まれたての鹿に似た動きで、亮太は惑星より離れた。
 最後に。花火のような大きな音を聴き、振り返る。
 炎に塗れ眠っていく、地獄の門番の姿を、その目に焼き付けた。
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