EXCAS
 向けられた銃口を前に、それでも千鳥足で床に伏せた。
 乾いた呼吸、乾いた嗤い。
 どこか壊れてしまったマリオネット。
 それがすべて本音。隠し続け背け続けてきた、己の本音。誰の死も悼んでいなかった、科学者の在り方。
 だから聞こう。その頼りない背中に、誰かの手を借りないと立てないほど弱りきった老人に。
 無限に近い時の流れを、その執念で僅かながら高みに近づけた男に。
 幻想のような不老を手に入れ、それが崩れかけている亡者に。

「こんなお前が、彼女を蔑む資格があるのか」

 一歩近づき、その身体が震えた。まるで、父親に怒られる子供。

「こんなお前が、一体何人の人間を犠牲にしてきた」

 一歩近づき、その身体は後ずさった。コンソールにぶつかり、浴びた火の粉に苦しむ。

「こんな事をして、一体何を得た。お前という存在の転機になったのか?」

 一歩近づき。その胸倉を掴みあげた。
 言語を忘れた赤子のように、ただ暴れる。
 力ない拳に、力なくしなった腕に叩かれて。殴る気も失せたというのに、火傷を負ったその頬を思い切り張り倒した。

「お前は! 娘の死を悲しんだと言った、それは偽り! その悲劇を繰り返さないと言った、それは虚言!」

 繰り出した拳は一度。二度目はない。
 ただ、言葉という刃の嵐は止む気配がない。
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