EXCAS
「たった一人の科学者の盲心によって、この戦いは起こされた! たった一人の少女の運命を捻じ曲げた! お前に! こんな世界(処)にいる資格はないんだ!」

「ならば。ならばそれは。それもかこのいぶつのはず、わたしとおなじ。それにも、いばしょはない」

 まだそんな事を言うのかと、最後に殴りつけた。
 哀れを誘うだろう背中に、止めとばかりに刃を付きたてる。
 少女に、その薄汚い血は見せたくないと、言葉の剣を。

「ここに。俺の隣が、あの娘の居場所なんだ」

 そんな事が。そんな事が。
 そんな事が。そんな事が。
 天井が崩れていく。壁が燃えていく。
 凝り固まった鉄は妄執、組み上げられた月日は歪。
 すべて、この世にあってはならないもの。
 悲しくもなく、悔しくもなく。
 怒りでもなく、寂しさでもなく。
 初めて感じた形容しがたい感情に、レナは涙を流していた。
 止めどなく枯れる事なく、虹の鮮やかな色を帯びた瞳は雨に喜ぶ。
 柔らかな少女の手を、少年は確かに握って立たせた。その温かさは人のもの、その柔らかさも人間のもの。過去なんかじゃない。
 それは確かに、現実に生きる幸せ(温かさ)。
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