EXCAS
 それは子供の砂遊び。
 海辺で砂を固めて作ったお城が、波に攫われて崩れていく。
 そんな光景。
 赤く、黄色く。
 青く、仄かに。
 儚くなる色合いに包まれて、ゆっくりと壊れていった。
 黒竜王の姿は彼方に消えたあと、天使を見たものは一人としてここに存在しない。
 ただ燃えていく一つの星を、たった十数名で眺めていた。
 その中に、亮太がいた。
 大勢の人の墓場として壊れていく、星を泣きながら見送っていた。
 隊長へ。彼は立派であったと思う。時に頼もしく、時に励ましてもらい、隊長というよりも兄として慕っていました。
 副隊長へ。貴方の冷静さは憧れでした。助けてもらう事は当たり前、それが少しだけ申し訳なくて。出来るならばその背を守ってみたかった。
 ヴァイフェさんへ。とてもよき友人と思っていました。であった場所が戦場でなければ、一生涯の付き合いになっただろうと思える。それが残念。
 藤咲詩絵瑠。幼馴染として友達として、好きだった。ランサーが好きでショウが好きで、たった一つの幸せではなく二つ持っていた幸せ。それが招いた結果はきっといいものだとは言えない、だから、今度はもっと普通な幸せを噛み締めて。
 最後に二人。君たちは、どこへ消えたというのだろうか。
 伝言を頼まれて、自分からも言いたい事があるというのに。
 やがて消え逝く星を見て。果たしてそれは何だったのだろうか。
 いくつもいくつも、それは雨?
 輝き煌き、それは命?
 歪に大きく時に小さく数多に振り続ける、それは残骸?
 宇宙という夜に、強大な焚き火を前に立ち尽くす彼らの前に。それは流れ星。
 人の数だけ、亡くなった人の数だけ。
 新たの命の数だけ、輪廻の輪に帰る数だけ。
 とても目に優しい輝きを放つ星の風は、いつまでたっても消える事はない。
 その星が、最後の命を燃やし尽くすその時まで。
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