EXCAS
 不意に、物思いに耽る横から名前を呼ばれた。
 眠っていたのか、毛布を引きずって傍に来ていた。
 駄目、と注意する。
 何度も言っても治さない癖。
 寂しがり屋で、目覚めた時に自分がいないと探しに来る。
 タオルケットを持って、怖くて震えないよう。
 夏の暑さが抜けきらない秋ならばいい、冬になれば厚手の布団と毛布も一緒に引き摺ってくる。洗濯が大変だ。
 潤んでいる瞳を見て、泣かれるのは勘弁と頭を撫でた。
 飲み物でもやればすぐ落ち着いてくれるのだけど、この子供は猫舌。
 淹れたばかりの熱い紅茶を飲ませたなら追い討ち。
 むにゃむにゃと寝言を言いながら、もう一人現れた。
 同じ顔つきの、女の子。
 男の子は泣きそうな顔を、やっとの事で笑顔に変えて。
 女の子は眠そうな顔を、やはりすぐに寝入ってしまった。
 子らは双子、名付け親は父親。
 ただし自分もつけたいと、母親も駄々をこねた。
 だから、男の子を父親がつけ。
 女の子を母親がつけた。
 そこでも喧嘩しそうだったが、母親の言い分が強かった。
 以前、貴方は女の子の名前をつけたから、と。
 懐かしい昔を思い出しながら。溜息を吐いた。
 この時期、三年目の子育てを始めた秋。
 もうじきその子らの誕生日で、もうじき、大切な墓参りがある。
 曖昧な輝きを見せた太陽が、とても綺麗。
 それはこの場にいる三人と、この場にいない第三者の総意。
 明日は墓参りに行こうと、子供たちに誘う。
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