EXCAS
 曇り空。
 すぐに土砂降りとなって、一つの傘を強く叩いた。
 そこは廃寺。
 何年も前に廃れた神社。
 住職もなく、墓を作ったのは移り住んでから。その時には既に無人。
 子供たちは、退屈そうについて来る。
 雨の日は苦手なのだろう、それは親も同じ事。
 雨の日は嫌いで、けれどそのあとは好きだった。
 僅かに曇った空から覗く太陽と、どこまでも続く架け橋を描いた虹。
 いつか、大切な人に見せてもらった虹を思い出す。
 確かに、あの空と雨は作り物であった。
 けれど、虹は本物。
 その思い出も、間違いなく大切な本物。
 ふと、墓前の前に誰かが立っていた。
 傘も差さずに濡れている。
 その姿は、待ち人に捨てられた青年のよう。
 子供たちは声を失って立ち止まり、離れて遊んできなさいと親に言われた。
 逆らう事はせずに、二人ともすぐにどこかへ行ってしまう。
 人影は、どこかへ行こうとしない。
 呆然と、不出来な墓前を眺めていた。
 親は構わず、町で買ってきた花をそこに添えた。
 線香を添えるには生憎で、ただ手を合わせて黙祷する。
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