EXCAS
 傘をしまい、その顔には微笑みを湛えた。
 若い女性。
 髪を上げ、その顔には少しだけ苦い笑み。
 若い男性。
 互いに私服。黒い礼服などではなく、普段着の私服。
 なぜなら、そこは墓前でありながら友人の家。
 祈りは死者に対するものではなく、久々に会えた友人たちとの会話。
 だから私服、気軽に話せるようにと、二人で決めた事。

 女性の顔に、涙が浮かぶ。
 男性の顔が、晴れていく。

 ようやくこの場に立てたのだと、それを心から思う二つの顔。
 その名前を、今までの歴史を語る名前を、二人は呼び合った。
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