EXCAS
 白いEXCASは驚いた。
 発言自体に驚いたのではなく、それを発した少年の変化に驚いたのだ。
 異質の空気を纏った、彼女が良く知る存在がいた。

 少年は一歩前へ踏み出す。
 それだけで天使は震えた。
 恐怖ではなく、狂気でもなく歓喜でもない。正体不明の衝動に気づけず、一挙一動に目を奪われる。
 呼吸を忘れ、拒絶も浮かばず、捲くし立てる言葉の螺旋に呑まれる。
「傷だらけじゃないか。あいつらにやられたんだろう。あいつらが狙っているのは。あんたを見つけて、奴らはここを壊そうとしているんじゃないのか!?」
 その通りだ。すべての原因。何故狙われるのか、狙っている組織はなんなのか、ここまでする理由があるか。すべてを答えられる者はなく、答えもない。
 果たして少年はその事に憤っているのか。
 藍色の瞳を射抜く蒼い視線。奥に滾る怒りの炎は、だが決して責めはない。
 理不尽という名の凶器、悪意、それらを打ち砕くための護身の刃。
 同じ名を語る守護する盾、拒絶の壁、それらを打ち砕く正しき槌なり。
 理不尽の攻めを許さずに、理不尽の守りも許しはしない。故に言葉を紡ぐ。
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