EXCAS
「この波動……チッ、どうやら最悪のシナリオだ」
 蒼い機体のパイロット、ガイアは輝く白を眺めながら舌を打つ。背後に続く部隊を引き止め、発光が止むまで待つ。
 魔術兵装用の魔力を計るメーターが異常な数値を叩き出した。
 通常の兵装ではありえないほどの値が上昇していく。しかし攻撃によるものではない。
 では安全なのか? そんな事はない。
 予め、この作戦の上司から言われていた事があり、それをガイアは思い出した。

 ――最優先事項は、目標の破壊。見つからない場合、十代の民間人を襲え。
 ――理由を聞いてもよろしいですか。何故、その年代の者を、
 ――片っ端らから襲えとは言わん。機体に魔術兵装の調査機を積んでおく。
 ――回答になっておりません、答えをお聞かせください。
 ――詳しくは、私も知らん。ただ、目標の搭乗者になるからだ、だそうだ。
 ――その年代の子供が、ですか?
 ――侮るな。目標は、パイロットがいれば恐ろしい戦力を発揮するという。
 ――一体、何故?
 ――ならない事を祈るが、詳しくは接触させて見ればわかる。
 ――まだ、理解できません。それではまるで、
 ――だから、そうならない事を祈る、と言っている。

 ガイアは後悔していた。
 空中へと逃走した時、最大戦力で撃ち落していればと。
 だが、それは夢想だ。最速で行える最高の攻撃をしろ、とあの時に指示を出したのは誰だった。
 敗北はなくとも、引き分けにされた時点で気づくべきだった。
 後に語られるだろう存在、古に存在したと謳われる怪異。
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