EXCAS
 其の身の定義は貫き通す事。
 信じ委ねた思いを、最後の時まで折れず抱き続ける事。
 それが存在意義。
 それこそが存在理由。
 故に、彼らの思いはここに一つ。

『「……これ以上、好きにはさせない。ああ、そのために戦う……!」』

 影よ、怖れ慄く必要はない。
 影よ、震え退く愚挙もない。
 影よ、それは脅威となりえるか。
 其は未だに脅威とも恐怖ともなりえぬ小さな灯。故に消し去るがいい、その身が台風であるならば、いくらでも掻き消せる。だが忘れるな。

『「お前達を許さない! そのために、戦い抜いてやる!!」』

 それは、己が思いを全うするまで負ける事はない。
 降りかかる理不尽を切り捨てる、けれど理不尽に塗れた道を行く。
 これはその一端を飾る、鯨幕。

 暗い闇を照らす白い風。
 暗い闇を行く白い影。
 重なる叫びは開幕を告げる。

 誰がそれを心地よいと感じるか。
 誰がそれを嬉しく思うだろうか。
 それはここにはいない誰か。鍵を握る暗闇の奥にいる深い存在。
 白い影が、その光で闇を照らし抜いた時に。やがて最奥の色に出会えるだろう。
 だからその時まで、いつまでもベルを鳴らし続け給え。
 辿り着くまでが、鯨幕。
 物語の、序章。
 これは、壮大な幕間に過ぎないのだから。





END
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