EXCAS
「……眠い」
 それが第一声。痛む身体を無理矢理無視して、眩しい太陽の輝きに目を細めショウは飛び起きた。全身に痛みが走ったが、そんな事は関係なかった。
「この明るさはなんだ?」
 太陽ではない人工の光。ステーション内で昼と夜を作り出すシステムライト。動力部のある、地下層にそんな物はない。少なくとも、ここまで目を焼く強烈な光源は。
 ならばここは何処か。地下でもなく、あたりに敵もなく、誰もいない草原地帯。意識を失う前までの景色とは、とても結びつかない。
「……やれやれ。天国に逝ける性格だとは、思ってなかったのに」
 結論は、そういう事だった。
 敵に囲まれ、柱に取り付いたEXCASを撃墜したところまでは覚えている。
 その先が、押し寄せてきた敵集団に目標を合わせたところで、意識を刈り取られていた。意識がない存在をどうして殺せない道理がある。
 隙だらけに寝そべる機体。敵に囲まれて、無抵抗な身体は文字通り蜂の巣に。
「……まったく、死んだというのに自分の死に様をまだ考えるなんて」
「あら、誰が亡くなったの?」
 ショウが聞いた事のない、どこか夢見心地にさせてくれる声があった。
 靡く草原を振り返る。緩やかな丘の上に、微笑を浮かべた、淡い人が在る。
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