EXCAS
 白銀の長い髪の毛は揺れて。翡翠色の双眸は宝石の輝き。身につけた空色のワンピースドレスはとても似合っている。神秘的な、可愛らしい、少女。
 彼が絞り出せた声はありきたり。文字通り見惚けていたから。
 クスリ、と少女は笑う。前屈みになって、遠くから彼の顔を覗く。
 目を奪われる。星屑に煌めく髪が草原に触れながら混ざっていく。踏み締める音は雪原に似て、春より冬に生息する、大人しく儚げな少女。そんな幻想。
「改めて、挨拶するね」
 翡翠の瞳は似ていて。白銀の髪は肌と同じく白。空色のドレスは輝かしい。細く無骨な指は、柔らかく温かな細指。舞い上がるための翼は、人と混ざるために折られ畳まれた。巨大で何者をも屈服させる天使は、存在さえも薄く儚げな少女へと変貌していた。
「初めまして。わたしの名前はTYPE00。貴方を助け、助けられたEXCASです」
「呼び難い、名前だな」
 時計の針が一周した、と思える錯覚。その後にそう切り出した。
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