EXCAS
「難民でここに着たんですが。入口で、ここで手続きをしろと」
『チィ、今さら難民か。まあいい、早く上がってこい。この先に物資搬入用のエレベーターがある、車を邪魔にならない場所に止めてからこい』
「偉そうに」
 低く呟き、車を道路の外れに止める。
 様子が普段と変貌して、リンは強くしがみ付いた。レナも気づいたのか、本人には悟られずに彼女を諭していた。
 車を止めると、ショウはいつも通り。
 手を差し伸べる姿も変わりない。が、
「わるい。キレたら勝手に逃げてくれ」
 物騒な一言を残した。二人の血の気が引いていく。
 搬入用のエレベーターは即席物らしく、随分物々しいわりに簡素だった。工場などで見かける鉄骨丸出しの、車数台は収納できるスペースがあった。
 今にも崩れ落ちそうな音を立てながら、一分と掛からずにデッキまで辿り着く。着いたところで、太った軍服の男に迎えられる。苛立った表情で、三人を値踏みするように頭の先から爪先まで見下した。
 ギリッと、不穏当な音がレナの隣から聞こえた。
 取り返しのつかない事をしないでほしいと、必死になって天に願った。
 男は正規の軍人らしく、白と黒が基本の制服に身を包んでいた。さらに二人の軍人が加わり、取り囲んで同じく見下す。
 レナはハラハラした。いつ、隣の爆弾が破裂するか。
 気のせいか、ビキビキと罅割れる音が、
「すみませんが、俺たちはどうしたらいいのでしょう」
 怒りを堪えたか、けれど表情は硬いまま問う。
 軍人達も争う気はないのか、さっさと進めと先導する。
 あ、の濁った発音。
 男達には聞こえなかったが、右手で顔を覆うショウを二人は見た。随分不味い兆候だと、端から見てもよくわかる。
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