マー君2(原作)
<4>

全く、人間とは面倒な生き物だ。

俺達個々に意思があるために、互いの共存、対立が生じる。

しかし、交わることのできない、独立したものだ。

共存はただの形だけであり、人は人を理解することは不可能なのだ。

いくら理解しようとも−−。

このセンコーがいい例だ。

俺を叱っているのは、俺を理解しようという上辺だけの気持ちであり、それは実に無意味である。

だから、怒りという感情により俺を理解できない自分の無知さを覆い隠したがっているのだろう。

「一樹! お前このままでいいのか? 頭はできるのに、テストはサボる。授業はでない。本当に高校に行く気はあるのか?」

今一樹の前には回転椅子に座り、真剣そうに一樹を見つめている中年の男の姿があった。

がたいがよく、スポーツ刈りにしたさっぱりした顔だ。

目つきが少し厳しいが、生徒達からの信望は良い。

このしかめっつらをした男が一樹の担当−−柳橋先生だ。

体育を専門とし、普段は明るく楽しい教師だ。

ただ、感情の波が激しく、その点では生徒達に恐れられている。

「先生なぁ、お前を応援したいんだ。なんせ、お前には才能がある。やればできるはずだ。

最近成績が落ちているが、それはお前がサボっているからで、本気をだせばクラスで1番とれるはずだ。だから−−」
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