マー君2(原作)
『君はまだここに、来ちゃ−−』

声が消えた。耳を割くような風音に掻き消された。

ドクン、ドックン−−。

なぜか鼓動が高鳴る。

一樹は眼下に見えてきた光に興奮を覚えた。

ここなんだ。

ここに俺の求めてきた物がある。

俺の本能がそう叫んでいる。

だから−−。

また一段階段を下りる。と、下から風音に混じり何かが聞こえてきた。

それはこっちに向かってきているようだ。

気付けば光は消え、闇が広がっていた。

それに風もぴたとやんだ。

いったい何がおきたのかと、歩を止める。

ヒタ、ヒタ、ヒタ。

下から何かが近づいてくる。

ここに来て、一樹はなぜか寒気を覚えた。

君はまだここに、来ちゃ−−。

ピチャ、ピチャ、ピチャ!

音が近くなる。

下の曲がり角から何かが姿を現した。

一樹はそれを見た途端、さらに寒気を覚えた。

血だらけの白い仮面をつけた子供が階段をはい上がってきていたのだ。

ボロボロの服に血肉が絡みあい、首をゴキッ、ゴキッ−−回転させている。

「あ、あぅああー」

白い仮面をつけた何かは闇の中に不気味に佇まう。

一樹を見上げズタズタに傷いた腕を、手を伸ばす。

あまりの恐怖に腰が抜けそうになった。
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