きらいだったはずなのに!

「ただいまー……」


 そう、お母さんから恐怖のメッセージが届いてたっていうのに、それをすっかり忘れて寄り道して帰ったあたし。


 そろーっと静かに玄関を開けて、中の様子をうかがう。


 自分の家なのに、まるで泥棒みたいだ。


 とりあえず、“鬼”、つまりお母さんには、まだあたしが帰ってきたことに気付かれてないっぽい。


 怒られることには変わりないからさっさと終わらせたいところだけど、やっぱりこう何度も同じことで怒られるとその内容も毎回一緒だから、正直めんどくさいっていうのが本音。


 うんざりするほど怒られるって、いい加減自分も懲りろよって感じだけど。


 勉強はどうしたって無理なんだからしょうがない。


 ……でも、今回はちょっとわけが違う。


 だって、絶対カテキョの話が持ち上がるはずだから。


 憂鬱になりながら靴を脱いでいると、見慣れない革靴がきれいにそろえて置かれているのが目に入った。


「誰か来てるのかな?」


 リビングの方からは話し声がするから、やっぱりお客さんみたい。


 思わぬ幸運来た。


 これでしばらく時間稼げそうだし、その間に心の準備をしておこう……。

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