きらいだったはずなのに!
目の前にある、ぼやけた桐島さんの顔を見て、思う。
やっぱり似てるんだよなあ、って。
どこか、悠斗と似てるなあ、って。
今日、桐島さんの顔をちゃんと見たのは今が初めて。
だって、桐島さんの顔を見たら、悠斗と重なりそうでいやだった。
目を合わせないようにしていたのに、桐島さんの手によって合わせられた視線。
涙でぼやけるせいで目の前にいる桐島さんが悠斗にしか見えなくて、涙を止めることなんてできなかった。
「ちょっ、おい。やっぱりなんかあったんだろ? 大丈夫か?」
そう言って、あたしの目の下をなぞる優しい手つきに、さらに涙があふれた。