きらいだったはずなのに!

「……っ!」


「お、泣き止んだ。えらいえらい」


 桐島さんがびっくりするくらい優しくて、あれだけぼろぼろ零れ落ちていた涙はぴたりと止まった。


 そんなあたしを見て、まるで犬を愛でるかのごとく、今度は頭をわしゃわしゃーっと撫でくりまわされる。


「子供扱いしないでっ!」

 
「いや、犬扱い」


「やっぱり犬かっ!」


「うん、うちにいたトイプーそっくり」


「やっぱり小型犬かっ!」


「ぶはっ! おまえ、ころころ表情変わって、いそがしいやつ」


 犬に例えられてぷんすか怒るあたしを見て、桐島さんはいままで見たことがないくらい全開の笑顔で笑ってる。



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