きらいだったはずなのに!
その表情に少しだけ胸が飛び跳ねた気がしたけど、見慣れないものを見たからだと思う。
「……桐島さん、いつも作り笑いしてるけど、いつもそうしてたらいいのに」
ぽつりとつぶやくように、あたしの口からはそんな言葉が漏れ出た。
だって、そっちの方が似合うなって思っちゃったんだもん。
普段お母さんとかに向ける王子様みたいなキラキラスマイルも、元の容姿がいいから似合うし悪くはないけど。
それでも、子供みたいに笑ういまみたいな顔の方が、かっこいいなって思っちゃったんだもん。
不覚だけど。
まさかあたしがそんなことを言うと思っていなかったのか、あたしにそう言われた桐島さんは目を見開いて驚いているみたいだった。
けどそれも一瞬で、右の口角を少しだけあげて笑ういつもの意地悪な顔に戻ったけど。
「お子ちゃまなおまえにはわからないかもだけど、これも世の中を上手く渡り歩くために必要なの」
「……ショセジュツ、ってやつ?」
「難しい言葉知ってんじゃん。やるぅ~」
「へへっ、まあね~」
ショセジュツって、漢字はわからないけど。
あの桐島さんに褒められて有頂天になる。
さっきまでの涙はもうどこかに引っ込んで、元からなかったみたいだ。
鼻高々に得意げな顔をするあたしに、単純すぎだろなんて桐島さんがまた笑うから、ぼさぼさ頭のままあたしまでつられて笑っちゃった。