きらいだったはずなのに!
「……前にさ、入る高校間違えてるって桐島さん言ったじゃん?」
「おー」
「あたしね、桐島さんに一個だけ嘘ついた」
唐突に切り出したあたしに一瞥をくれただけで、桐島さんはまた手元の答案用紙に視線をうつして採点を始める。
いつもだったら「無駄口叩くな」ってお喋りを強制終了させられるから、話してもいいんだと思って気にせず続けた。
「ミヤコちゃんと同じ学校に行きたいからって思ったのは嘘じゃないけど。一番の理由はね、元カレと同じ学校に行きたくなかったからなんだ」
この近辺での受験校は、大体5つに絞られる。
最初にあたしが受験しようと思っていた高校は、当時のあたしの学力に合った、いま通っている高校よりだいぶ偏差値の低いところ。
中学の時は赤点こそなかったものの、学力は良く言っても中の下で、悠斗とはいつもテストの点数を競い合っていた。
高校に入っても、きっとこんなふうにくだらないことで言い合いしたり、笑い合ったりするんだろうって思いながら。
そんな日が続けばいいなって、思いながら……。