きらいだったはずなのに!

 そこまで言うと、隣りからは呆れたような大きなため息が聞こえてきた。


 あーあ、またバカだって笑われるんだろうな。


 ていうか、なんで桐島さんに話しちゃったんだろう。


 がっくりうなだれて、思わず肩が落ちる。


 けれど、そんなあたしに桐島さんが言ったのは、意外な言葉だった。


「……理由はくだらないけど、そこまで勉強頑張れるなんてすごいことじゃん。少しは自信持ったら?」


「……っ!」


 そんなふうに言ってもらえるなんて思っていなくて、喉元で息が詰まった。


 ……そう、あたし、頑張ったんだ。


 悠斗が大好きだったから、忘れたかったから、大きらいだった勉強を頑張ったの。


 思いがけない桐島さんの言葉にいままでの自分が少しは報われたような気がして、またほんの少しだけ涙腺が緩む。


< 107 / 276 >

この作品をシェア

pagetop