きらいだったはずなのに!

「つーか、その元カレの方がバカなんじゃね? 人のこと言える立場かっつーの」


「……たしかに」


 忌々しそうに吐き捨てるように言った桐島さんの言葉に、なんだか憑き物が落ちたような気がして、心がふっと軽くなった。


 バカだアホだとたくさん言われてきたけれど、こうして言われてみると悠斗だってバカじゃんね?


 あたしのこと言える立場か?


 ……思い返したらだんだん腹が立ってきた。


「バカ男にバカ女って言われたくないっつーのっ!!」


「おーおー、その通りだ」


「なにがバカがうつるだよっ! 人のこと言えるんかーっ!!」


「おー、その意気だ」


「悠斗のばかやろーっ!!!」


 肩でぜいぜい息をしながら、思っていたことを大声で口に出したら腹の虫は収まったし、出かかっていた涙も引っ込んだ。


 桐島さんに感謝だ、一応お礼を言っておく、心の中で。


 その時、机の上に置きっぱなしにしていたスマホの通知がポコンと小さく音を立てた。


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