きらいだったはずなのに!

 ぶんぶんと頭を振ってみても気休めにしかならないけど、一旦あれやこれやは捨て置くことにする。


 そんなあたしの様子に、「ま、どうでもいいけど、元カレのことは早くどうにかしとけよ」なんて、まるで他人事のように桐島さんは言った。


 鼻筋の通ったその横顔がやっぱりどうしても悠斗に似ていて、心がほんの少しじくっとした。


 だけどそれには気付かないふりをして、桐島さんと同じように机に広げられた問題集に改めて向き合った。





「今日もありがとうございました」


「はいはい、お疲れ様」


 夜は二十一時を回り、あっという間に桐島タイムこと地獄のお勉強タイムは終わりを告げた。


 いまは玄関で桐島さんが帰るのを見届けているところだ。


「お前が見送りとか珍しいね。明日は槍でも降るんじゃねーの?」


 あたしに背を向けながら、ぴかぴかに磨かれた革靴を履く桐島さんにそう嫌味っぽく言われた。


 たしかに、玄関まで見送るのは今日がはじめてだ。


 そんなふうに嫌味を言われても仕方ないのかもしれない。


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